作品紹介(5)
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作品名あの霊とフルタイム
読みあのことふるたいむ
初出「スーパージャンプ」1990年8月25日増刊号(集英社)
収録おみそれ!トラぶりっ娘 DX ページ数19
あらすじ  
コメント  

   
作品名こ・う・そ・く エスパー
読みこ・う・そ・く えすぱー
初出1990年9月「コミッククラフト」(2)(ラポート)
収録封印 ページ数8
あらすじ  突然ではあるが,今,地球は侵略されていた.
 代々地球を守る使命をおびた超能力者の家系に生まれた東ひかるは, 父から与えられた「ちょうきょうかスーツ」を身につつみ, 今こそ,「こうそくエスパー」に変身する!
コメント  …駄ジャレだそうです.それ以外にコメントのしようがないのですが,一応, 名前は「光速エスパー」からのパロディであることは気がつくと思います.
 それにしても,「代々地球を守る使命をおびた超能力者の家系」というのを どこかで見たような気がするのですが…, ああ,そうそう「仁侠妖精伝」の元々の設定がそうでした. 結局ボツになったみたいですけどね.
 あと,そうそう,主人公が口にくわえている ゴルフボールみたいなのは「ギャグ」という名前なのだそうです. どっちも口を塞ぐ,という意味なのだとか.(なんとかコメントが埋まりました(^^;)

   
作品名ふたば君チェンジ▽
読みふたばくんちぇんじ▽
初出「月刊少年ジャンプ」1990年12月号〜「月刊少年ジャンプオリジナル」1997年3月増刊号(集英社)
収録ふたば君チェンジ▽ 話数44
あらすじ  締留(しめる)ふたばは,女の子が気になり始めた「男の子」. そんな彼が,大人になった途端に「女の子」へと変態した?
 好きな女の子,島美咲姫(しま・みさき)への思いを胸に, 学校内のみならず,芸能界をもパニックに巻き込んで,行き着く先は…宇宙?
コメント  あろ氏曰く,ホノボノラブコメ…だそうです.
 途中,芸能界編に移った頃(JC5巻と6巻の間), 掲載紙を月刊ジャンプ本紙から増刊に移し,掲載ペースが落ちましたが, それでもなんとか完結を迎えました(展開はかなり唐突でしたが…).
 なお,JC5巻のカバーでの作者コメントに出てくる「ターニングポイント」 というのが気になりますが,おそらく,4巻の最終話「ふたば君,ハント!?」 の巻において,数ページ落とした事件のことを言っているのだと思います. その痕跡は,JC4巻(初版)での184〜189ページに見ることが出来ます. この部分は純粋にコミックスのみの描き足しであり,雑誌発表時には183ページまでの 掲載になっており,翌月にはJC5巻の「ふたば君,盗撮さる!?」の巻が唐突に 掲載されたのを覚えています.
 原因としては,この前後からあろ氏の作品はコミックスに掲載できるページ数が たまるとすぐにコミックスが出版される,という奇妙な法則が 出来上がっていたのですが, これが破綻をきたしたのではないでしょうか?
 とまあ,詮索はこれまでにして,内容についてですが,やはり,現実の 芸能界が廃れているのを反映したのか,芸能界編あたりで迷走・失速しています. 設定から,一時期,高橋留美子の「らんま1/2」のパクリとも言われましたが, あろ氏が,弓月光の「ボクの初体験」のオマージュであることを告白している ことから, ともすれば,第2次性徴を迎えた中学生に対する,克・亜樹の「ふたりエッチ」 と解釈すると,おもしろいかもしれません.
 そういえば,「ふたば君チェンジ▽」の中での最大の謎となってしまった, ふたばの母は一体どういう人物だったんでしょうね?

   
作品名三獲関係
読みさんかくかんけい
初出1990年9月「4 Spirits プラス 2」(4)(ラポート)
収録たからもの ページ数46
あらすじ  まだ幼かったあの頃…
 原っぱを駆け回った幼なじみの3人の恋の物語….
 彼らが紡ぐ,運命の赤い糸は,からみ,ほどけて, 何をつむぐ…?
 オムニバス形式で贈る,大人の恋の物語….
コメント  ラポートの「4スピ」でのテーマは「ラブコメ」であったこの作品. あろ先生が白状したところによると,ギャグ作品をまとめるための 方便としての恋愛しか描いたことがなく,苦し紛れで3本のオムニバス形式 になったそうです. それが功を奏したのか,作品全体を流れるテンポはこの上なくゆるやかになり, それまでのあろ氏の作品にはないムードを醸し出している佳作となりました.
 ところで,タイトルの「三奪関係」というのが「三角関係」と 「三人が奪い奪われる関係」 という語呂をもじったものであることは想像できますが,作品中, 実際に三角関係らしきものは表に現れてきません. それがわからない私は,まだ本当の大人の恋愛をしていないのでしょうか?

   
作品名たからもの
読みたからもの
初出1991年3月「4 Spirits プラス 2」(5)(ラポート)
収録たからもの ページ数42
あらすじ 空を割って そびえ立つ
高層団地に かこまれて
広場で遊ぶ 少女がふたり
ふたりをめぐる 「たからもの」
ひとりの命 なくなった
残ったひとり 残ったこころ
行き着く先に あるものは…
コメント  ラポートの「4スピ」でのテーマは「ホラー」であったこの作品. あろ氏はホラー漫画において,読者を怖がらせる最大の要素として 「絵柄」を指摘し,あろ氏の絵柄にはそれがないことを認めた上で, シチュエーションと演出で読者を怖がらせようとしたそうです.
 しかし,心象風景の描写と画面の白さは,まるで純文学でも読んでいるかのような 錯覚に読者を陥らせ,ホラー映画的な恐怖とは一線を画す作品となっている気がします.
 私は,ホラーにおける恐怖は音楽と感情移入による所が大きいと考えていたのですが, その類の恐怖とは違うものを見せつけられた気がします.(あろ氏が示した現代に おける本当に怖いもの−「狂気」−に感情移入してしまったら終わり,と言われれば それまでですけど)

   
作品名恋は芙蘭・フラン▽
読みこいはふらん・ふらん▽
初出1991年4月「少年キャプテン セレクト」Vol.2(徳間書店)
収録恋は芙蘭▽ ページ数54
あらすじ  SFXの本場,アメリカから転校してきた美少女・鎖芙蘭(くさり・ふらん)は, 転校初日からサッカー部のエース・舞蔦(まいつた)くんと運命的な出会いをした. しかし,先生でありながら舞蔦への一方的な禁断の愛に生きる環(たまき)が, 芙蘭に舞蔦を渡すまいと芙蘭のことを調べあげているうちに, 芙蘭の秘密を知ってしまったからさあ大変.
 舞蔦をめぐって,芙蘭と環の女?の戦いが始まった!
コメント  ライナーノートによれば, あろ先生が掲載される雑誌のあてがないにもかかわらず描き始めてしまったくらい思い入れがあった作品なのだそうです. そのためかキャラクターの練り上げがよくなされており,話のテンポが非常によいので, 「俺が描かなきゃ誰が描く」とばかりにあろ先生がノリノリだったことがこちらに伝わってくる楽しい作品となっています.
 そして,この作品は「ニンジン嫌いの子に無理矢理『ニンジンうまい』と言わせよう」というあろ先生の不純な動機から, 当時のあろ先生のアイデアと技術が全て詰め込まれています.その箇所は敢えてここでは触れませんが, 一読した後,あろ先生の意図を記したライナーノートを読んでから, さらに作品を読み返すとまた違った読後感が得られることでしょう.
 ちなみに,私の場合,作品中感情移入したのは舞蔦くんではなく金造(キンちゃん)でした. これは,序盤で芙蘭と環の秘密が読者に明かされたせいなのでしょうが,もし,明かされていなかったとしたら, 間違いなく舞蔦くんに感情移入した事でしょう. しかし,その場合,中盤での感情の盛り上がりがない分,終盤に秘密が明かされた際に拒否反応が出てしまったかもしれません. そう考えると,やはりこの作品には裏で細かな計算が働いているのだな,と思ったりもします. (しかし,この作品はやはり連載で読みたかったですね.芙蘭が秘密をバレさせないようにするドタバタや, 他の女の子をからめて舞蔦の恋愛感情の盛り上がりを描いていけば,きっと終盤の舞蔦に感情移入できたことでしょう. 残念です.)
 ただ,あのオチは未だにどういう意図だったのかわからないでいます. あのようにオトすことで「やっぱりニンジンは嫌い」と言われそうな気がしてならないのですが…. まさか,「現実に返れ」ですか?

   
作品名まちあわせ
読みまちあわせ
初出1989年10月「4 Spirits プラス 2」(6)(ラポート)
収録たからもの ページ数50
あらすじ  初めてのデートで待ち合わせの時刻に遅れた二人. そんなときの言い訳に持ち出したあんなことやこんなことが,もし本当に起こったら…?
コメント  4スピにおけるテーマは「時間」.あろ氏はこのテーマをSF的に解釈せず, 「時間」に追われる様をスラップスティック風に描いたのがこの作品です. ただ,残念なことにタイムサスペンスなのか 突拍子もない出来事が連続して起こるギャグ漫画なのか中途半端になっている気がします.
 仮にこの作品を後者,すなわち初期〜中期のこち亀へのオマージュだと解釈しても, これから起こる事を説明してから描写しているぶんテンポが悪くなっているのでしょう.
 もうちょっと具体的に説明しましょう.こち亀で両さんが部長から逃げ出した次のコマで 戦車にはじき飛ばされるような描写を想像してください. あろ先生の場合は,ここで両さんが部長から逃げ出す前に, 戦車が派出所の前の道路を走っている姿を描写してしまうわけです.
 この辺は宿命的に説明を必要とするSFが, パロディ以外ではギャグと両立しにくい理由であるのかもしれません.

   
作品名炎のダルマー
読みほのおのだるまー
初出1992年4月「4 Spirits プラス 2」(7)(ラポート)
収録恋は芙蘭▽ ページ数42
あらすじ  新近代五種競技−.それは「スイカ割り」「ダルマさんがころんだ」「缶蹴り」 「ケンケンパ」「盆ダンス」という5つの競技において, 知力・体力・精神力といった人間の持つ能力の限界にいどむ苛酷なスポーツである.
 その近代五種競技の一つ, 「ダルマさんがころんだ」の全国選手権大会では異変が起こっていた. 「ダルマさんがころんだ」の宗家であり本命と目された 御華襟(みかえり)チームの主力・龍磨始(たつま・はじめ)がラフプレーに よって重傷を負ってしまったのである.
 このため,チームはかつて家を飛び出し, 「スイカ割り」の賞金稼ぎとなっていた始の弟・一歩を説得してチームに引き入れることにした. 一歩の強引ともいえる攻撃でチームは予選を勝ち進むが, 始には気になっていることがあった. そして,それはついに 「お前は,オレをこんな身体にした連中と同じだ!」 という一歩への叱責の形となって噴出してしまう.
 それを聞いた一歩はチームから飛び出した.
 責任を感じた始は,重傷の身をおして予選の決勝に出場するも, 奇しくも緒戦で重傷を負わされた相手, 剛陰寺(ごういんじ)チームの手にかかり,再び病院送りにされてしまう.
 たちまちピンチに陥る御華襟チーム.
 その頃,一歩はというと,ある者により謎の組織「地下ダルマさんがころんだ」の存在を, そして,その野望のために,兄の,そしてチームメイトの身が危険が迫っていることを知らされていた.
 急ぎ競技場へと戻る一歩.
 しかし,既に競技場では次なる犠牲者が….
コメント  4スピでのテーマは「スポーツ」であったこの作品, あろ先生が認めているように反則技を使った作品…つまりパロディです. するとパロディの元となった作品は何なのか気になる所ですが, 主人公の風貌から, かつてコ○コ○で一世を風靡した○ッヂ○平であることは誰の目から見ても明らかでしょう.
 しかし,ここがあろ先生の凄いところでありまして, この作品では本家をしのぐほどの設定が組まれており, とてつもなく深い世界観を構築しています. たとえば,私が記したあらすじはほとんどが物語の導入部でしかなく, 作品本編には全然かすっておりません. そして,作品自体は読切のはずなのに最終ページでは新たな敵が出現! となっており, 読者に「あ〜続きが読みてえ〜っ」と思わせるに十分なほどの「引き」 すら演出しています (面白いことにその後の展開すら読めてしまいます. それだけこの世界観がしっかりしている,ということでしょう).
 よって,この作品はいわゆる「パロディを越えた作品」の代表作として位置付けられ,あろ先生の器用さを示す際たる作品といえるのだと思います.
 しかし,読めば読むほど, あろ先生の絵柄がコ○コ○, ボ○ボ○などの少年雑誌に合っているように思えてきてしまうんですけど…. いいのかなぁ….

   
作品名ハンターキャッツ
読みはんたーきゃっつ
初出「少年キャプテン」1993年4月号〜1996年8月号(徳間書店)
収録ハンターキャッツ 話数38
あらすじ  ある政治家の「日本人は安全が決して安価ではないことをもっと実感 するべきだ」という発言が発端となって,従来の警察組織は解体された. その後,自治体によって分割半民営化された警察機構が組織され,その中には 犯罪者を追跡する専門のプロフェッショナルが現れるようになった.そして, 人々はその集団を,賞金稼ぎ(バウンティハンター)と呼ぶようになっていた….
 そんなハンターの中に,女性の,それも3人だけで組織される凄腕の ハンターチームがあった. 電脳女王(サイバークイーン)の明(メイ),鉄拳の晃(アキラ), 神速の輝(ヒカル)をメンバーとするそのチームの名は…ハンター・キャッツ!
コメント  今は亡き少年キャプテンで連載され,第1部・完となっている作品です. まだまだ,作品中での謎は解決されていないので,優&魅衣と違い,本当に 第1部・完なのでしょう.しかし,掲載誌がなくなってしまったので, 連載が再開されるのはいつになるのでしょう?
 「シェリフ」のコメントでも触れましたが, この作品と「シェリフ」の世界は 連続しています.キャッツのメンバー達も皆,例の国際犯罪組織との かかわりがあります. すると,当然,あのおかたの登場が待たれるところですが,まだまだその出番は 早い様です. それにしても,「シェリフ」で「盛り込めるだけのネタを突っ込んだ」と 言いながら,これだけのネタが出てくるのですから,改めてあろ先生の すごさを感じずにはいられません.
 ところで,この物語の主人公って誰なんでしょね?

   
作品名無敵英雄エスガイヤー
読みむてきえいゆうえすがいやー
初出「ヤングアニマル」1993年12号〜1994年13号(白泉社)
収録無敵英雄エスガイヤー 話数7
あらすじ  ― 「宇宙害虫」.
 それは宇宙空間を漂流し,ひとたび惑星に降着するとそこを根城に繁殖し,再び宇宙空間へと拡散してゆく生命体の総称である. 彼らはありとあらゆる環境に適応し,またありとあらゆるエネルギーを好む性質を持つ. ひとたび彼らの繁殖を許すと,その惑星はもとよりその恒星系の全てのエネルギーが彼らの繁殖によって消費され, その恒星系は死滅するという.
 ― そして今,その宇宙害虫は地球にもやってきていた….

 ごく普通の予備校生である友田涼一(ともだ・りょういち)はひょんなことから宇宙害虫駆除の業者に宇宙害虫の駆除を依頼されることになった. その業者は文明を持つ星に干渉することは許されていないが, 特例によりその星の生命体に害虫駆除の道具を貸し与えることが出来るため,涼一にその白羽の矢を立てたのだ.
 涼一に与えられた道具は3つ.攻撃ユニット「ミツル」,防御ユニット「シェラザード」, 機動ユニット「アーシェル」と名付けられた3体のアンドロイド.
 そして,ひとたび宇宙害虫が出現すれば,涼一は彼女らを身にまとい,無敵英雄エスガイヤーに変身して害虫駆除に立ち向かうのである!

 ゆけ!僕らのエスガイヤー! 戦え!僕らのエスガイヤー!
 その乾いた笑い声で,今日も宇宙害虫をやっつけろ!
コメント  SFです.それもかなりレベルの高いSFです. 主人公の格好は馬鹿馬鹿しいほどに変身ヒーローもののそれですが, そのことでかえって下手なSF小説よりもはるかに綿密に組まれた設定と世界観を持つ物語が際だっているためか読者を飽きさせません. そして,主人公の脇をささえるアンドロイドの3姉妹(シェラ・ミツル・アーシェル)と トラブルメーカー・翔子とがバランスよく配置されており,物語に彩りと広がりを与えています. 結果,この作品は非常に良質なエンターテイメントを提供しており, 数あるあろ作品の中でも非常に優れた作品のひとつとなっているのではないかと思います.
 アンケートに「完璧な組み合わせなのに続きが出ないのがくやしい!」というコメントがあったのですが, 確かに,なぜこれが売れなかったのかが不思議でなりません. 実際に売れなかったかどうかはわからないのですが,続きがでないことに関しては,設定から考える限り, 宇宙害虫を地球上から根絶することは不可能ではないにしろ,宇宙空間から絶滅にまで追い込むことまでは不可能そうですし, 物語の序盤でネタばらしをしているためボスキャラ的な宇宙害虫が出てこないと物語にヤマができませんので(これは「エスガイヤー2」のネタが使えそうな気もしますが), 物語を続けたところでどこでオトすかが問題となりそうな気もしないではありません.
 それでも,一読者として続きを読んでみたいと思わせる魅力が この作品にはあるので、コミックスに掲載されている「エスガイヤー2」の予告にて「…この本が売れればやらせてもらえます」とあろ先生が吐露しているように, 単行本を購入し,そして白泉社に応援のお手紙を書けば続編があるかもしれません.

 
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