作品紹介(11)
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作品名恋が芙蘭
読みこいがふらん
初出「ウルトラジャンプ」1999年No.34(集英社)
収録未収録 ページ数24
あらすじ  幼いころから想い続けていた,写真の中の父の恋人. いつしか,その幼心にも初恋の芽を植え付けていたそのひとは, 名を鎖芙蘭(くさり・ふらん)と言ったという….
 そして,高校生になったある日, 父が連れてきた再婚相手はその写真の人にそっくりな…いやその人そのものだった. それも写真と全く変わらない容姿のままで….
 かくして,自分よりも若い(容姿の)継母と同じ屋根の下で暮らすことになった 舞蔦無九郎(まいつた・むくろう)は,継母へのあらぬ感情を抱えて悶々とするのだが, 息子に母と呼んでもらおうと奮闘する芙蘭(ふらん)からのアプローチに, ついには生死(?)の一線を越えて….
コメント  かつて,作品が掲載されるあてのないまま描き始めるほどあろ先生がノリノリであった, と言われている「恋は芙蘭・フラン▽」の続編です.
 本作品は「みがわりアクシデンツ」の連載が終了してしばらく経過してから ウルトラジャンプ誌に掲載されたものですが, 舞台は「モンスター ハンター」よりもさらに時間が経った時代でありまして, なんと「世界一不幸な男」の息子がさらに不幸になってしまいます.果して,前作を読んでいて, その裏設定などを覚えていた読者はどれだけいたのでしょう?
 というわけで,やはり以前の作品を読んだ事のない人がどう受け取ったのか気になったので, ちょっと友人にこの作品を読ませてみたところ,話がわからないということはなかったものの, 思いっきりゾンビに嫌悪感を感じてしまったそうです.前作のコンセプトの成就にはまだ時間がかかるようです.
 それから,オチがものすごく唐突に感じられた,とも漏らしていました. 「せめてロボットになるのだったら,ある程度納得した」というのはその友人の弁ですが, ゾンビになってしまう理屈が描写されていなかった,もしくは ゾンビはロボット並みの市民権を得ていないためなのかもしれません.

   
作品名放浪のタン
読みさすらいのたん
初出「YOUNGキュン!」1999年11月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数16
あらすじ  冷たい雨の降る中,道端にうずくまっていた汚れた犬. その女の子は,普段なら気にもとめずに通り過ぎていたはずなのに, その訴えるような瞳が気になって,ついついその犬を動物病院に連れていくことにした.
 その犬 ―首輪から名前はタンということがわかった― は,衰弱していただけだったので, その女の子がタンを引き取ることにしたものの, タンは前の飼い主への忠誠心からか,頑なに食物を口にしようとはしなかった. 女の子はなんとかしてタンに食べ物を食べさせようとするのだけれど…
コメント  18禁の雑誌「YOUNGキュン!」に掲載された本作品ですが, それまでに掲載された一連の作品群がギャグ漫画の体裁を持っていたのとは対称的に, 本作品はいわゆるストーリー物,それもハートウォーミングに近いものを醸し出しています. 雰囲気としては「ぱぁとたいむCHASER」みたいな感じです.
 正直な話,私はこの作品を読んだ直後,うなってしまいました. とまどいとか「こんなのあろ作品じゃないやい!」といった拒否反応ではありません. この作品に思いっきり引き込まれてしまったため,「すごい!」と感嘆の声をあげたのです. 確かに,どこかで見た事があるようなシチュエーションなのは否定しませんが, そのことを感じさせないセリフ回しや場面の展開はたった16ページの作品とは思えないほど優れています.
 ただ,この作品のターゲットとなる層がちょっと高めのような気がします. なんとなく,このままビッグコミック系の雑誌に載っていても違和感はないように感じますし, 青年誌にしては刺激が足りないようにもみえますので(これは私だけかもしれませんが), 特に18禁雑誌ではちょっと浮いているように思えました. まあ,雑誌としてはバラエティーに富んでいいのかもしれませんね.
 ともかくこの作品は秀作だと思います.

   
作品名大っきくなぁれ!
読みおっきくなぁれ!
初出「YOUNGキュン!」1999年12月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数16
あらすじ  胸の大きさは思春期の女の子なら誰もが抱える悩みのひとつというもの. そんな一人の女の子がその小さな胸に大きな悩みを抱えていたところ, 目の前に保健の先生の突然巨大化したバストが現れた! 聞くところによれば,その胸は新薬の成果だというので, 早速,その新薬を試させてもらおうとしたのだけれど…?
コメント  えー,世の中は「ぷに」ですとか「つるぺた」といったジャンル(?)が隆盛を誇っていますが, 段々と作品に登場する女の子のバストが膨らみはじめ, 「そりゃナイゼみるきぃライフ」にて巨大バストの頂点に達した感のある あろ先生の描く女の子達の中では, 非常に珍しい「つるぺた」の女の子が主人公のお話です.
 作品そのものに対する感想ですが,どことなく理屈が通っているので笑える, というあろ先生の作風がよく表れていると思います. 起承転結もはっきりしていますし,非常に読みやすい作品だと思います. ですが,巻末のあろ先生のコメントでも触れられているのですが, 「使える作品にはほど遠い…」というのが、私にとっても正直な感想になります. (ちなみに,ここでの「使える」というのは,読者にとって「実用的」かどうか, つまり,リビドーを掻き立てるかどうか,と意味に解釈したのですが, もし,あろ先生が「作品として納得する」=「使える」と表現していたのならば, ここで陳謝しておきます.)
 一言「リビドーを掻き立てる」と申しましても, これは読む人の性癖とでも呼ぶべきものがそれぞれ違いますので, 読者全員のリビドーを掻き立てるのが非常に難しいことは想像に難くありません. それでも,大量の読者をひきつけなければいけませんから, 一般的な人の人生を顧みて, 最大公約数的なシチュエーションを提示していかざるを得ないのが 同人誌ではない商業誌の現状なのだと思います.
 では,最大公約数的なシチュエーションとは何ぞや,ということになりますが, ここでは「学校」とか「先輩・後輩」とか 「幼な馴染み」とか どんな人でも過去に体験したであろうシチュエーションを喚起させるものと, 現状から近い将来に起こりそうな「願望」だと思って下さい.例えるならば, 突然クラスメートだった女の子から電話がかかってきたり,女痴漢に襲われたり, 下宿に魔法使いの女の子が飛び込んできたり, といった感じに今すぐ起こってもおかしくないシチュエーションを 喚起させるものです. ですが,この最大公約数的なもの, というのは大概にしてその個人にリビドーを掻き立てさせるには足りないものなのです (なぜなら,その人が実際に体験したものにはかないっこありませんからね).
 現在,同人誌が隆盛を誇っていますが, その大半はエロパロですとかやおいといったジャンルのものです. これらの同人誌は商業誌の作品で提示された最大公約数的なシチュエーションから, 自分なりの「{俺,私}はここに萌えるんだ!」という部分を切り取ったものですから, 言わばその同人誌の作者の嗜好の垂れ流しみたいなもの, すなわちその個人のフェチの種類を吐露しているようなものです.
 だからと言って,同人誌を真似て, 商業誌上で「自分のフェチはここだ!」という作者の心の叫びを吐露したところで, 読者がひいてしまえばお終いですし, なにより個人のパーソナリティーの切り崩しという作業を伴いますから, その反動は図りしれません. 下手をすれば,作家生命すら終らせてしまいかねない危険な作業となります.
 ならば男は視覚で興奮するといいますから, 「絵」でリビドーを喚起させればどうかと思いつくかもしれませんが, これは先ほどのシチュエーション以上に読者の好みが分かれるところであり, 画力のみで引き付けるのは難しいと言わざるを得ません. コアなファンはつくかもしれませんが, 絵にこだわると人格が壊れる可能性が高いので,出来れば止めて欲しいものです.
 では,結論としては何なのでしょう. これを読んでいる方はいい加減疲れてきているかもしれませんが, 書いている私も疲れてきましたので, いきなり結論を書きます.答えは「ドラマ性」です.
 近年, 美少女ゲーム業界では純愛系と鬼畜系の2極化が起こっています. 純愛系というのは,例えば「To Heart」あたりから顕著になってきたのでしょうが, シナリオ重視のトラウマからの解放とか癒しといったテーマを持った作品です (特徴としてモノローグが多用されます). で,鬼畜系というのは, 心の奥にある欲望を具現化させてとにかく蹂躙していくタイプの作品です (メイドさんはとりあえず鬼畜系に入れときましょう).
 この2系統の作品に共通することは, とにかく,登場人物の(それまでの人生とかそういう意味での)背景が 丁寧に描かれ,そして,その心情が嫌と言うほと述懐され, 好むと好まざるに関わらず, 読者(プレーヤー)はその登場人物の心理に立たされてしまうということです. つまり,感情移入の度合が一般のゲームよりも高いため, それなりに盛り上がり,結果面白いとなるのでしょう. 要するに,今,18禁漫画で求められているのは, 単なる行為に至るためのシチュエーションだけではなく, 読者を登場人物に感情移入させて なおかつその目を引き離させない「ドラマ性」 もしくは「サスペンス性」となっているわけです.
 これは,購入者層がかなり重なっていると思われる18禁漫画でも同様でして, 読者は何に期待しているのかということに思いをはべらせれば, おのずと同様の解が導かれると思います. また,そうであればこそ商業誌でやっている意味合いも出てくるのだと思います.
 また長々と書いてしまいましたが(これは現実世界でのストレスが強いためです), ぶっちゃけていえば,比較的短い16ページでの1話完結という形式での漫画では, 上述した「ドラマ性」を表現するには少ないと思われますので, また連載をやってくれないかな,と期待をしているので, とにかくあろ先生には頑張っていただきたい,とまあそういう話です.
 …このコメントってこの作品そのものにあまり関係ないですね. すいません(ああ,脈絡がない…).

   
作品名ジャイアントチェリー
読みじゃいあんとちぇりー
初出「YOUNGキュン!」2000年1月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数16
あらすじ  自分の体のある部分が大きくへこんでいることについて悩んでいる女と, 自分の体のある部分が大きく膨らんでいることについて悩んでいる男とが, ひょんなことから道端で運命的な出会いをした.
 そして彼らはその大き過ぎるものが、 お互いの心のすき間を埋め合うのにはちょうどピッタリであることに気がついた−.
コメント  YOUNGキュンに掲載されていた一連の18禁マンガの一作です. えー,この作品についてのコメントは非常につけにくいんですけど, まあ,ネタ的はよくあるネタかな?と思います. ただ,このネタでリビドーをかきたてられるのかどうか, と尋ねられれば私は「ちょっと難しいかな?」と答えざるを得ません. しかし,このネタ自体はかなり昔から見かけるので 一定の需要があるのかもしれませんね (放送禁止用語を使わないで書いているので,非常に意味が通りにくくなっていますね.すみません).
 アラ探しみたいになるので,あまり書きたくはないのですが一言だけ. 露出僻のある方が「このままでは見せ物になるしかない」と言って嘆かれるのはちょっとおかしいのではないかと. 多分,天職なのではないかと思うのですが… (まあ,この変の微妙な部分が露出僻のある方の露出僻たる所以なのかもしれませんが).
 あ,今思い出しましたが,人之路文丸さんの同人誌「ごめんね」に似たようなネタがあったような気がします. いや,単にアレがアレなだけであって,別に話の内容が似ているわけなのではないのですが.

   
作品名爆裂!白雪姫
読みばくれつ!しらゆきひめ
初出「YOUNGキュン!」2000年2月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数20
あらすじ  むかしむかし…,ある国にそれはそれは可愛いらしい白雪姫という名前のお姫様がいました. 白雪姫は,お城で王様とそしてちょっといぢわるなお妃様と一緒に暮らしていました.

 お妃様がいぢわるなのには訳がありました. 白雪姫はお妃様が自分で産んだ子どもではないからです. 白雪姫の本当のお母さんは白雪姫が小さい時に死んでしまったので, かわいそうに思った王様が,新しく結婚したのが今のお妃様なのです.

 でも,このお妃様はちょっと普通の人ではありませんでした. ナルシストだったからですって? いいえ.実はお妃様は,悪い魔法使いだったのです.

 ある時,お妃様が魔法の鏡に問いかけました.
「鏡よ鏡,鏡さん.世界で一番きれいなのはだぁれ?」
 鏡は答えました.
「それは白雪姫です」

 この答えに嫉妬したお妃様は白雪姫を魔法で森へ追放してしまいました.

 行くあてのない白雪姫は,森の中で七人の小人と出会いました. そして,白雪姫は小人たちの家で一緒に楽しく暮らすことにしました.

 お城ではお妃様が再び魔法の鏡に問いかけました. でも,鏡はまたもや「白雪姫」と答えたのです.

 白雪姫がまだ生きていることを知ったお妃様は,白雪姫を殺すことにしました.

 お妃様は,まず,リンゴ売りのおばあさんに化けました. そして,白雪姫に毒入りのリンゴを食べさせようと, 白雪姫の暮らす小人さん達の小屋へと向かうのでした….
コメント  YOUNGキュンに掲載されていた一連の18禁マンガの一作です.雑誌には巻頭カラーで掲載され, カラーページは4ページありました.
 まずははっきりと言います.この作品は間違いなく「Hギャク」としての傑作です. 私の場合,一読目にケタケタと笑ってしまいましたし,繰り返して読んでも非常に面白いです. これは,私の中に「鉄拳!シンデレラ」というこの物語と良く似た(?)コンセプトを持った 作品の記憶があったためかもしれませんが,少なくとも白雪姫のエピソードを知っている人が読む分には十分に笑えると思います. 18歳以上の人は是非読んでみて下さい.(可能ならば「鉄拳!シンデレラ」も併せてお読み下さい.すると1ページ目から笑えます.)
 あと,実用的かどうかという点に関してですが, まあ,少々年齢が高めということを除けばいいんじゃないでしょうか? シチュエーションとしては,いろいろな組合せ(?)でからませることが出来そうでしたけど, 物語の流れからは自然に感じました.それに,少なくともこの類のシーンなくしては物語は成立しませんので, この作品こそまさに「このジャンル(18禁)でなくては出来ないもの」と言えると思います.
 あと,末尾のコメントには「長いことSFを描いていない.ああっ,大ブロシキを広げて〜!」とありましたが, あろ先生のSF長編は私を含めて多くのファンが求めていることでもあると思います.是非,実現して欲しいですね. (でもなるべくなら,フロシキは畳んで欲しいです)

   
作品名恋が芙蘭 II
読みこいがふらん つー
初出「ウルトラジャンプ」2000年2月号(集英社)
収録未収録 ページ数24
あらすじ  若い継母・芙蘭に恋をして,ついに一線を越えてしまった無九郎. それまでの自分とは変わってしまったギャップに苦しむ無九郎だったが, そんな無九郎に想いをつのらせる女の子、小萌つのりが現れた.
 そして,無九郎のことが心配になって, 学校にまで来てしまった芙蘭とつのりがはち合わせとなってしまうのだが….
コメント  本作品は前作の人気があったためか, 数ヶ月間をおいて,ひき続きウルトラジャンプ誌に続編として掲載されたものです.
 最初の作品,「恋は芙蘭・フラン▽」では, 芙蘭のもつ強烈なキャラクター性に対抗するために,環(たまき)というキャラクターが配置されましたが, 本作では,その環に相当しそうなキャラクター・小萌(おもい)つのりという女の子が登場しました. その娘との対比のせいなのでしょうか, 前作に比べて芙蘭がなんかふっきれたかのように香ばしいキャラクターになっています. 少なくとも.当初のコンセプトであった「かわいい」女の子を示すキーワードである「いじらしさ」とか 「おしとやかさ」といったものは,きれいさっぱりなくなっているようです. まあ,人妻ですから,と言ってしまえばそれまでなんでしょうけれども, 芙蘭のこの性格がどのように形成されたのか,ということが知りたいですね. (作品中で無九郎が感じている葛藤は必ずあったはずですし, 「腐れ脳ミソ」の一言で片付けてしまうのは勿体ないと思います. その描写があれば芙蘭のキャラクターに深みが出てくると思うのですが…)
 さて,本作のオチというか「引き」ですが, なんとなく続編が出そうな感じになっています. これから, 無九郎が元に戻るためにあれやこれやしてくれるような展開がありそうです. この連作中ではあえて触れていないのかもしれませんが,なぜ芙蘭はゾンビなのか, 普通の人間からゾンビになるにはどうすればいいのか, ゾンビから人間になるにはどうすればいいのか, といった謎について,いつか明かされるときが来るのでしょうか?

   
作品名ペロペロちょこれいと
読みぺろぺろちょこれいと
初出「YOUNGキュン!」2000年3月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数16
あらすじ  
コメント  

   
作品名エデンの選択
読みえでんのせんたく
初出「YOUNGキュン!」2000年4月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数20
あらすじ   木星コロニーと地球とを往復する運搬船『サンドラ』が 木星を出発してから2ヶ月が経過した頃、 積荷を最大限積載するために 搭乗員1名分の「生命維持装置」しか備えていないこの船に、 密航を目的とした少女が潜んでいたことが判明した。
 この場合、選択肢は限られている。 船の「生命維持装置」が少女の生命を支えられない以上、 彼女を待っているのは冷たい方程式の適用、 すなわち宇宙空間への放出である。
 そこで、少女は生き残るための唯一の選択肢を選ぶことにした。 それは、この船で船長の助手をしている女− 自分たちから職を奪った張本人である「人造人間」を放り出させ、 代わりに自分を置いてもらうこと。 そしてそのためには、船長への体の提供をもいとわないこと−。

 だが少女は知らなかった。既に彼女には選択肢など残っていなかったことを。 そして、彼女の行為は船長にある選択を決意させたことを−。
コメント   世にSF作品は数あれど、女の裸の出てこないSF作品は ほとんどないと言われています。 裸でなければならない場合もあれば、 単に作者の趣味であったり、人気取りの為であったりと理由は様々ですが、 この18禁雑誌に掲載された本作品においては、 女の裸がこれでもかというくらいの「必然性」を持って出てきます。
  この「必然性」というのは、 作品中の様々なところに仕掛けられた設定、 そしてストーリーに説得力を与えるだけではなく、 SFの醍醐味とも言える読後感を醸し出す作用を持ちますが、 その反面、読者がその「必然性」に納得しなければ 単なる作者の一人よがりとなってしまう危険性があります。
  特に、18禁漫画ではその傾向が強いのですが、 作品中に必ずその「行為」もしくはそれに準じる状況を描写しなくてはならない、 という制約から、あまりにも唐突にその描写が始まってしまい、 せっかくそれまで積み上げてきた作品世界を崩壊させている例が少なくありません (美少女ゲームでも多いですね)。
  ですが、本作品には読者を納得させるだけでなく、 読者を作品の中にぐいぐいと引き込むだけの「必然性」がちゃんと存在しており、 前述のような作品世界の崩壊を招くこともなく、見事に作品が収束しております。 伏線の張り方といい話の展開といい、 この作品がたったの20ページしかないとはとても思えません。まるで、 星新一のショートショートや藤子不二雄のSF短篇集を読んでいるかのような 見事な読後感を味わせてくれました。 この作品は間違いなく傑作と言ってよいと思います。

   
作品名恋が芙蘭 III
読みこいがふらん すりー
初出「ウルトラジャンプ」2000年5月号(集英社)
収録未収録 ページ数16
あらすじ  継母に恋をして、 ついには人としての一線を超えて継母・芙蘭と同じゾンビになった無九郎。 だが、まだゾンビにはなりきれていないためか、 うまくすれば生き返ることが出来るかもしれない、という。 そのためにはこれ以上の体の損傷を防がなければいけないのだが、 小萌つのりがやってきて…。
コメント

   
作品名恋人のお口
読みこいびとのおくち
初出「YOUNGキュン!」2000年6月号(コスミックインターナショナル)
収録おっきくなぁれ▽ ページ数16
あらすじ  この田舎の学校を卒業してから、もう一年。
卒業と同時にこの町から出ていった 幼なじみの瑞樹から連絡があったのはそんな頃だった。

 オレたちは町を見渡せる高台の神社に行く事にした。

 思い出話や新しい町のこと。 互いの変わっていないところや変わったところ。
 口をついて出てくるのは、そんな他愛もないことばかりだった。

 だけど、今思えば、オレは必死にあの話題に触れないようにしていたのだと思う。

 そのことを知ってか知らずか、瑞樹がその話題に触れた。

 「もう…、ガールフレンドできた?」

 そうだ。かつて、瑞樹の恋人だったのは、オレの…。
コメント  YOUNGキュンに掲載された、18禁の作品です。
 この作品は、そのタイトルから想像できるかと思いますが、 ガムやプロ野球でおなじみの食品会社のキャッチコピーをもじったものでして、 作品としては「一発ネタ」と言ってもいいかと思います。
 ストーリーそのものは実に単純でして、 ネタを取り除いて、ストーリーだけを抜き出して書いたとしますと、 あまり面白くなくなってしまうかもしれません。
 ですが、この作品は、その様々な仕掛けにより、 文章だけでは味わえない面白みを醸し出すことに成功しています。 その仕掛けをちょっと列挙してみましょう。
 まず、画面は全て主人公の目線と同一になっています。 登場人物は主人公とヒロインの二人だけなので、必然的にほとんどのコマは ヒロインで埋め尽くされることになります。 そして、コマの構図を、ヒロインが画面の向こう側を向くように、 つまり読者に対して視線を投げかけるようにして構成しておき、 意図的に読者を主人公と同一視させています。
 しかし、それでは主人公のセリフを入れるべきフキダシが描けませんので、 主人公のセリフは全てウィンドウボックスにおさめられ、 ご丁寧にゴシック風のフォントにしてあります。
 そして、妙に写実的なセリフと心情の吐露、そしてヒロインとの純愛。
 大体想像がついてきたと思いますが、この作品はギャルゲー、 それもビジュアルノベルに分類されるものの文法をそのまま漫画に適用したものなのです。
 「すずにおまかせ」の仕事で 「鈴がうたう日」というギャルゲーをやったあろ先生が、 早速その作風を取りこんだものと思われますが、 それをこのネタで使ったところにあろ先生のうまさを感じ取れます。
 この作品のメインテーマはいわゆる口での奉仕になるのですが、 男にとっては、そのシーンを第三者の目で見てもあまり興奮しない、 と言われています。いろいろ理由があるのでしょうけど、 単純に視覚的に興奮するシーンではない、 というのがその理由になるのでしょうか(あまり追求しないで下さい)。
 となると、いろんな形での感情移入が必要になりまして、例えば、 自分自身が奉仕してもらっているようなシチュエーションを考えますと、 自分の視点と同一の構図、 つまり「女性が上目づかいで見上げる」構図 というものがいわゆる刺激的な絵になるわけです(それ以外の状況としては、 サド的な嗜好とかあるんでしょうか?)。
 結局、何が言いたいかと申しますと、フェラチオの話にビジュアルノベルの文法を 適用したことで、フェラチオというテーマで18禁漫画の本来の目的を達成しつつ、 作品的にも面白いものとなった、ということでして、とどのつまり、 すごく面白かったんです。はい。
 ただ、ビジュアルノベルに限らず、エロゲーをやったことのない人が読んだ場合、 面白さが半減してしまうのかもしれません。ただ、残念ながら、 私の周囲にはそのような友人はいないので、確認のしようがありませんが。

 
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